食育放送原稿公開 ウクライナ情勢と「たこ焼き」
4年前、兵庫県T市立のF小学校で行われた放送です。一見難しい国際情勢を、子供たちが自分事として捉えた素晴らしい事例をご紹介します
本記事は、学校教育における食育の優良事例を紹介することを目的としており、関係者のプライバシーに配慮して掲載しています。
ウクライナ情勢と「たこ焼き」がつながる?子供の感性が光る食育のカタチ
ウクライナ情勢を「たこ焼き」で読み解く食育の実践紹介
給食時間の放送、毎日の献立紹介がマンネリ化していませんか? 「もっと子供たちに食の背景を伝えたい」とお悩みの先生方へ、ぜひ参考にしていただきたい実践事例があります。
※児童のプライバシーに配慮し、氏名はイニシャルに書き換えています。
第1話「ウクライナと小麦」
メンバー:Mさん(委員長)、Sさん(副委員長)、Tさん(5年生)
Mさん:みなさん、こんにちは給食委員長のMです。
Sさん:同じく副委員長のSです。
S&M:二人合わせて S&Mです!
Mさん:Sちゃん、Tちゃん、夏休み終わっちゃったね~。
Sさん: はい。でも私は( )もやったし、( )もしたので思い残すことはありません! Tちゃんは?
Tさん: 私は(※アドリブ)
Mさん: 私は(※アドリブ)な夏休みだったかな? 福住小のみなさんはどうでしたか?
Sさん: それではTちゃん、メニューの紹介をお願いします。
Tさん: はい! 今日のメニューは、ゆかりごはん、牛乳、とり肉の照り焼き、玉ねぎとツナの酢の物、そして「豚肉のフォー」です。今日の話題は、M委員長、何にしたらいいですか?
Mさん: 今日の話題は**「ウクライナと小麦」**です。
Sさん: そういえば、毎日のようにウクライナとロシアの話がニュースになっていますね。でも、それが小麦粉とどんな関係があるんですか?
Mさん: 先生に聞いたんだけど、ウクライナは世界第5位の小麦輸出国なんだって。
Sさん: じゃあロシアはどれくらいなんですか?
Mさん: ロシアは、なんと世界第1位の小麦輸出国。
Tさん: たいへんですね! 日本に小麦がこなくなっちゃいます。だから今日の話題がウクライナになったんですね。
Mさん: ……それが、実は違うんです。
T・S: ああ、違うんだぁ。
Tさん: じゃあ日本はどこから小麦を輸入しているんですか?
Mさん: 日本が一番たくさん輸入しているのは、アメリカとカナダです。
Sさん: じゃあ、戦争が起きても日本には関係ないですね?
Mさん: それが、大いに関係あるんです。
T・S: 関係あるんだぁ!
Mさん: これも先生に聞いたんだけど、小麦の値段は世界中で「相場」が決まっていて、戦争の影響で世界中の小麦の値段が高くなってしまうそうなんです。
Sさん: でも私はどちらかというとパンより「ごはん」が好きだから、関係ないかな。
Tさん: 私もこれからは「ごはんチーム」に入ります!
Mさん: ちょっと待って。小麦からできる食べ物はパンだけじゃないですよ。
T・S: 他に何があるのかなぁ?
Mさん: 麺類の多くは小麦からできています。
Tさん: ああ、うどんは小麦ですよね。
Sさん: ラーメンも小麦かな。
Tさん: あとは、焼きそばとか!
Sさん: おそばと言えば「出石そば」はそば粉だから関係ないですね。よかった!
Mさん: 実は出石そばも、そば粉だけじゃなくて小麦が使われているんですよ。ほとんどのおそばには小麦が入っています。
Sさん: そういえば「二八そば」ってありますね。2割が小麦粉で、8割がそば粉なんだ。
Sさん: そういえば「二八そば」ってありますね。2割が小麦粉で、8割がそば粉なんだ。
Mさん: 小麦粉からできているものは、まだまだありますよ。Tちゃん、他には?
Tさん: 小麦、小麦……ああ! ひょっとして、ケーキやクッキーじゃないですか!?
Sさん: お菓子が食べられなくなるのはいやだぁ~!
Tさん: パン、麺、お菓子……。我慢すれば、なんとか「ごはんとおモチ」でやっていけそうです。
Mさん: 小麦粉を使う食べ物は、他にも「お好み焼き」や**「たこ焼き」**もありますよ。
Tさん: えええっ! たこ焼きは絶対にゆずれません!!
Sさん: Tちゃん、どんだけたこ焼き好きなんですか(笑)
Tさん: だって、大阪の人はたこ焼きをおかずにしてご飯を食べるぐらいなんですよ!
Mさん: そうですね。いろいろなものが食べられなくなるのは寂しいです。
Sさん: 早く戦争が終わってほしいですね。
Tさん: そうですよ。たこ焼きが食べられなくなるし!
Mさん: 値段が高くなったりして不便だけど、まだ私たちは何かを食べていけるだけ幸せかもしれませんね。
Tさん: 大人は、お菓子とか我慢できるんだろうな。
Sさん: でも、スイーツが大好きそうな先生もいますよ?
Mさん: ふふ、どの先生かな? あと、大人の人がよく飲んでいる「ビール」の原料は何だと思いますか?
Sさん: 大麦じゃないですか?
Mさん: その通り。小麦も大麦も、ロシアが輸出世界第1位なんです。
Tさん: ビールも値上がりしたり、なくなるかもしれないんだ……。小麦や大麦がなくなるって、大変なことなんですね。
Sさん: Mちゃん、でもお米は和食の代表ですよね。パンがなくてもご飯があれば!
Mさん: それが、そうでもないんです。世界で一番お米を食べている国はどこでしょう?
Sさん: 日本かな?
Tさん: 中国も多そう。
Mさん: 1位はバングラデシュ。1日におにぎり10個分も食べています。2位はラオス、3位はカンボジア。日本はなんと……50位なんです。
T・S: 意外~!!
Mさん: 私たち日本人は、実はお米以外のものを結構食べているんです。だから今食べているものを、全部お米に変えるのは難しいんです。
Sさん: いいこと考えました。お米みたいに、日本でも麦をたくさん作ればいいんですよ!
Mさん: 国内産の小麦もありますが、今は輸入が9割、国内産は1割です。
Sさん: やっぱり輸入に頼らなければいけない理由があるんですね。
Mさん: そうなんです。今ある農地で麦を作ろうとしたら、今度はお米を作る場所がなくなってしまいます。
Tさん: このまま戦争が続いたら、日本も食べ物がなくなるなんて困ります。
Mさん: Tちゃん、安心して。すぐにはなくならないけれど、じわじわと影響が出てくるのはこれからです。
Sさん: Mちゃん、わかりました。食料事情や環境のことも勉強するのが「食育」なんですね。
Mさん: はい。二学期の最初に少し難しい話になっちゃいましたが、こうして食事ができることに感謝していただきましょう。それでは、おいしく食べて!
Sさん: 楽しく食べて!
Tさん: 食べたあとは……
全員: 奥の歯がつるつるになるまで、ていねいに磨きましょう。See You Tomorrow!また明日!
先生方へのヒント:この原稿の「ここ」がすごい!
いかがでしたでしょうか。この原稿には、先生方が食育プログラムを作る上でのヒントが詰まっています。
- 「たこ焼き」というキラーコンテンツ: 難しい国際情勢の話を、子供が「絶対にゆずれない!」と思う好きな食べ物に結びつけることで、一気に「自分事」にしています。
- 意外なデータの提示: 「お米を食べる国、日本は50位」という意外な事実は、子供だけでなく先生たちの知的好奇心も刺激します。
- 対話が生む共感: 「物知りな子」「素直な疑問を持つ子」「ユーモアのある子」という3人の役割分担が、教室で聞いている子供たちの心の声を代弁しています。
食育は、ただ「栄養」を教える時間ではありません。 目の前のごはんから、世界と自分のつながりを想像する。そんな豊かな時間を、ぜひ皆さんの学校でも作ってみませんか?


